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宮地くんはふう、と胸を撫でおろすとその場にふにゃりとしゃがんで柔らかく笑った。
「なんか胸の奥がふわふわするな。これもお前の魔力を共有しているからだろうか。お前はいつもこんな感じなのか? ……ハハ、なんかすっごく温かいなあ」
日を浴びた猫がよくそうするように、宮地くんはうーんと伸びをして横になった。こんなリラックスした宮地くんは初めて見る。私もなんだか力が抜けて、その場に座った。
夕暮れ時。オレンジの光が窓を抜けて入り込む。
「良かったのか?」
天井を見つめたまま、宮地くんが私に聞いた。
「契約の要諦。お前が提示する条件が『友達になること』で。そんなことでよかったのか?」
そんなこと、か。私はついおかしくってフフフと笑った。
「わかってないなぁ。宮地くん、私と友達になるってことはね、勝手に私の記憶を消すこともダメだし、私と魔法以外の話もいっぱいしないとだし……そうそう。それと私のことも『お前』とかじゃなくてちゃんと名前で呼んでね」
宮地くんをからかおうと半分冗談のつもりで言ったのだけれど、宮地くんは怒ることも照れることもせず、「なんだよそれ」とケラケラ笑って起き上がった。
「――菜穂、これから話すことは他言無用だ。親にも、もちろん他の友達にも言ったらだめだ」
突然真剣な顔で、「菜穂」と呼ばれドキッとした。昨日今日の付き合いだけれど、宮地くんは絶対照れて呼んでくれないと思っていたのに。なんだか調子が狂う。
「それが私に守ってほしい秘密?」
「そう。俺の契約の要諦だ。破れば、死ぬか何か取り返しのつかないことが起きる」
陽は大きく傾いて、もうほとんど空は藍色に覆われている。西に追いやられた太陽がなんとか光を届けようと鈍くその身を輝かせる。宮地くんはひどく落ち着いた声で話し出した。
「こことは別に魔法界っていう魔法使いだけが住む世界がある。俺はそこからやってきた。俺の本当の名前は、リン・パラディフィールド。魔法界の貴族の息子だ」
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