魔法少年は歌いたい

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「ねぇ、お母さん」  そこまで口にして、言葉を濁す。『私は魔法使いの子供なの?』本当はそう聞きたいのに。 「何?どうかしたの?」  お母さんはそんな私の気持ちなんて知るはずもなく、鍋から顔を向けずに声だけで答える。 「……ううん。やっぱりなんでもない」 「変な子。ほら、もうすぐできるから、コップを並べてくれる?スパゲッティ食べてお腹一杯かもだけど、ちょっとくらいは私のシチューも飲んでよね」  わかった、と努めていつも通りの声で返事する。大丈夫。まだ聞かなくても大丈夫。きっとお母さんにも何か事情があるのだろう。いつかきっとお母さんから私に教えてくれるだろう。だからまだ大丈夫。まだ私は待っていられる。  ランドセルを部屋において、再びキッチンに行って二人分のコップを手に取る。食器棚の奥にしまってある残り二つのコップを見て少し寂しくなりながら、慎重に食器棚の扉を閉めた。  さっきまであった心のふわふわはとうに消え、いつにもまして寂しくなるのが辛くて、その日はつい温かいビーフシチューを食べ過ぎてしまった。
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