魔法少年は忘れたい

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~魔法界からの手紙~  週末、宮地くん家で作戦会議をすることになった。宮地くんとおばあちゃんとオレンジジュース片手に話し込む。 「まず、お前にこれを見て欲しい」  宮地くんがスッと私に差し出したのは一通の手紙。金の装飾の入った綺麗な封筒に暗い紅色の便箋。そこに白色の綺麗な文字で綴られていたのを読み始めようと目を通した瞬間、手紙がひとりでに浮かんで知らない男の人の声で話し始めた。 『やぁ、リン。元気してる? なかなかにいい働きをしているようだと聞いた。流石、我が弟だ! しかも心強い仲間ができたとか。どうだ、最近の近況報告をかねて、一度その子をつれて魔法界へと連れてきてはくれないか。王令云々は大丈夫、いい方法があるからさ。というわけで、皐月の三の日、迎えを寄越すからしっかり準備しておくように。 世界一の愛を込めて、ベル・パラディフィールド』  やけに陽気で明るい声。手紙はそこまで話すと、またただの紙に戻ってパタリと机の上に落ちた。どうやらこれも魔法の力らしい。共有された宮地くんの魔法の知識が私にそう教えてくれた。 「これは……?」 「聞いた通りだ。魔法界からお前を連れてくるよう命令があった。五月三日に迎えがやってくる。……クソ、何が『連れてきてはくれないか』だ。最初からこっちに拒否権なんかないくせに」  宮地くんは吐き捨てるようにそう言うと手紙を回収しようと手を伸ばした。けれどなぜかおばあちゃんがそれを片手で制して、手紙を取りポケットにしまった。 「ベル坊ちゃんには私から連絡をさせていただきました。リン坊ちゃんにはもう説明しましたが、ナホちゃん、契約魔法とはどういうものか話してもらえるかい?」  宮地くんはそっぽを向いて肩肘をついている。なんだか決まりが悪そう。  よくわからないまま、言われた通り宮地くんの知識から契約魔法についてを引っ張り出しておばあちゃんに確認した。 「『契約魔法は、人と人、或いは人と世界が約束をすることで、通常ではできない魔法を可能にする特殊魔法』のこと」  本当の意味ではよくわかんないけど。おばあちゃんは私の言葉を最後まで聞くとうんと頷いて話し出した。 「その通り。だけどね、大事な部分が抜けているよ。契約魔法ってのはね、人と結ぶときは誰とでも簡単に結んでいいものじゃないんだよ」
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