魔法少年は忘れたい

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 それは昨日の午後四時過ぎくらいのことだったという。近所に住む三年生の博己くんが突然訪ねてきては落ち着かない様子で開口一番「クマのぬいぐるみが家出した」と叫ぶように一言。 「無くしたのかい?」  そうおばあちゃんが聞いても博己くんは首を横に振って否定する。 「ううん、家出したんだよ」  まあ、この際ぬいぐるみが無くなったことをどう表現しようがどうでもいいことだと判断したおばあちゃんは、とりあえず慌てた様子の博己くんを落ち着かせて詳しく話すよう促した。  博己くんも説明しなければ埒が明かないと理解したのだろう。けれど話した言葉はとても信じられるような内容ではなかったという。 「どんな内容だったの?」  絵里ちゃんが興味深げに聞くとおばあちゃんは苦笑いして言った。 「それは直接博己くんから聞いた方がいいでしょう。たしか博己くんと絵里ちゃんは同じ登校班だったわね。博己くんの家まで案内してくれる?」 「あら、そうだったかしら。ごめんなさい、その博己くんがどこに住んでいるかは私にはわからないわ」  絵里ちゃんは驚いたというように手を口に当てて答える。まあ登校班だからと言って家を知っているとは限らないか。年下からよく慕われている絵里ちゃんにしては珍しいように感じたけれど。 「博己とやらの家なら俺が知ってる」  そう言ったのは意外にも宮地くん。 「昨日ばあやからその話を聞いて調べておいた」  宮地くんがわざわざ調べたってことは……なんだか嫌な予感がする。  絵里ちゃんは「あら、熱心ね」と言ってクスクスと笑った。何だか今日の絵里ちゃん、いつもより大人びているような。 「それでは行きましょうか」  宮地くんの案内で、私たちは博己くん家へ向かった。
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