魔法少年は忘れたい

9/27
前へ
/74ページ
次へ
「中島って、音爆弾の……?」  宮地くんが言う通り、中島人形店といえば音楽で同じ班になった中島くんの家だ。宮地くんの言葉に絵里ちゃんが「あんたも似たようなもんじゃない」とつぶやいた。幸い、宮地くんにはその声は届かなかった模様。 「それじゃあ、今度は中島くん家に行くの?」  私がそう聞くとおばあちゃんが「そうねぇ――」と何かを言いかけて止まった。突然後ろを振り向いて遠くの方を見つめている。 「どうかしたのか」  宮地くんが聞くとおばあちゃんが迷ったように手に顎を当てて考え込む。やがて何かを決心したのか顔を上げて笑った。 「坊ちゃん、私はそろそろお店の方が心配なので、先にお店に戻ります。後のことは―― よろしくお願いしますよ」  含みを持たせたその言い方に、私と絵里ちゃんが首をかしげる。ただ一人何かを察した宮地くんは「わかった」と言って力強く首を縦に振った。  絵里ちゃんは心底どうでもよさそうに短くため息をつくと、私と宮地くんの手を取って言った。 「なら、私たちはさっさと行きましょう? 中島人形店だったかしら。私、お人形に興味があったの それじゃあね、おばあさん、博己くん」  博己くんとおばあちゃんに別れを告げて、私たちは三人で中島人形店に向かった。 ~絵里ちゃんの歌い方講座~ 「おおー、琴宮に桜井、それに宮地じゃん。どうしたんだよ」  中島人形店につくとまず音爆弾こと中島佑人(ゆうと)くんが出迎えてくれた。店番のお手伝いだろう、腰に『中島人形店』と文字の入ったエプロンをしている。 「こら、佑人。お客さんが来たらまずは『いらっしゃいませ』でしょ。――いらっしゃい。佑人のお友達?」  後から来たのは中島くんのお母さんだろうか。目元のあたりがよく似ている。
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加