ケース8️⃣ 前世輪廻

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ケース8️⃣ 前世輪廻

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。 照らされた日差しで、キラリと輝き続ける、『Royal Lounge』のプレート。 漆黒の色をした車の、右タイヤフェンダー上部で、そのエンブレムは存在感を際立たせていた。 傍に貯水池があり、静まり返った深緑の山中で、ブラックのアルファードは停められている。 その周囲には、『立入禁止 KEEP OUT 警視庁』と文字のある黄色いテープで規制線が張られていた。 まるで、アルファードという獲物に群がる蟻のように、辺りには多くの警察官が集まって捜査している。 そこへ、慌ただしくやってきたグレーメタリック色のスープラが停まった。 中から駆け出してきたのは、松田と江戸川である。 江戸川は、いつものようにダークブルーのジャケットを着込んでいたが、松田のほうは刑事らしからぬ迷彩柄のダークグリーンの上着を着ていた。 「お疲れ様です!」 何人かのすれ違う警官が、松田たちに挨拶する。 そうして松田と江戸川は、黒いアルファードの所に辿り着いた。 「松田さんが言っていた通り、ついにこの車が見つかりましたね。」 江戸川が、白い手袋をしながら言った。 松田は黙ったまま、車内を一通り見渡すと、嫌味のように返す。 「肝心の人間が、捕まらなければ意味ないけどな。」 その二人の所に、上司である刑事課係長の岩倉がやってきた。 「お疲れ様です!」 江戸川が挨拶をする。 眉間に皺を寄せた、渋い顔の岩倉が、二人に告げた。 「やっと見つけたこの車。ここに乗り捨てられていた。おそらく、ここで別の車に乗り換えたんだろう。」 江戸川が改めて、この車を見ながら言う。 「アルファードのロイヤルラウンジSP・・って。こんな高級車、あんな若い四姉妹たちが、どうやって手に入れたんですかねぇ?」 「若いっていっても、あの四姉妹は、大金を持っている。捜査で少しずつ、その大金の稼ぎ方法も分かってきているんだ。」 岩倉が、説明した。 何も言わずに、車内を見回している松田。 そうして、後部の座席シートに残されたままの、女の子の形をした人形を見つけた。 笑っている女の子の人形。 松田は、それを手に取り、何かを考えている。 それを見て、江戸川が言った。 「その人形、四姉妹のうちの、女の子の持ち物ですかねぇ?」 相変わらず、松田は何も答えず、ふいにその人形を江戸川へと押しつけてくる。 人形を手渡され、戸惑う江戸川。 そこでやっと、松田が独り言のように言った。 「俺たちは、アイツらに近づいている。もう少しだ。」
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