ケース8️⃣ 前世輪廻

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テレビのない李念は、居間のテーブルで一人、カップラーメンを食べる事に集中する。 詳しくは、テレビはあるのだが、2ヶ月程前に突然故障して見れなくなったのだ。 テレビを買い替えるお金などない。 李念はそれよりも、もっと美味しいご馳走が食べたかった。 風呂を済ませて、布団に入り就寝する頃、まだ隣は、ぶちぶちと文句を言う声が聞こえ、子供の泣き声もしていた。 しかし、こんな感じが、李念のいつもの日常で、こうやって今日という一日が終わっていくのである。 翌日の朝。 今日は、漬物工場での仕事が休みだった李念は、慌てる様子もなく、のんびり過ごしていた。 休日ぐらい、時間を気にせずゴロゴロと昼頃まで寝転がっているのもいい。 「あ! しまった・・。」 李念は突然、何かを思い出し、布団から起き上がる。 そうして、改めて置き時計の時間を確認した。 午前8時54分。 バタバタと台所まで行き着くと、2つの大きなゴミ袋を両手に持つ。 今日は、燃えるゴミの収集日で、前回出し忘れてしまったせいで、既に2袋も溜まってしまっていた。 「今日こそ、ゴミを出さないと・・。」 李念は、そう呟いて、ゴミ袋を両手に持って家を出る。 太った体型のうえに、大きなゴミ袋を2つも抱えた李念には、狭過ぎる階段だったが、構わずに階下へと下りて、アパートの外側に設置しているゴミ収集箱へと投げ込んだ。 今日が休日だと安易に過ごしていたのだが、慌ただしく駆け出して、なんとか懸念していたゴミ出しも無事に完了させる。 その安堵感と、いきなり全力で走り回った李念は、急に疲労感に襲われて重い体を引きずるように、また階段を上りはじめた。 それで、やっと4階まで上がってきた時には、全身から汗が吹き出すように流れる。 李念は、自分の部屋の前まで来ると、鍵を開けようとして、ちょうどポケットに手を入れた時だった。 ふと気がつくと、隣の家の玄関前に、女の子が立ち、李念のほうを見ている。 一瞬驚いた李念だったが、すぐに笑顔になって、女の子へと頭を下げた。 「おはよう。」 色白で、大きく澄んだ瞳をしている女の子は、少し痩せ気味に見えたが、訝《いぶか》しげに返答する。 「・・おはよう。」 それに対して李念も、その後の言葉がすぐに続かず不器用に当惑していたが、少し間をおいて投げかけた。 「・・お嬢ちゃん、名前は?」 女の子は玄関前で、暇を持て余しているかのようにドアノブを扱いながら答える。 「・・美羽。」 李念は、ぎこちない笑顔を浮かべて受け応えた。
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