ケース8️⃣ 前世輪廻

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帰宅途中で、昨夜立ち寄った近所の公園にまた、ふらりと足を運ぶ。 ちょうど近所の親子が、家路へと帰っていくところをすれ違った。 李念は、そのまま公園内へと入り、少し歩く。 その時、砂場の所で、幼い子供が一人座り込んで遊んでいる事に気が付いた。 李念は何気なく、その子の傍まで近付いていったが、すぐにその子が隣に住む美羽だと分かった。 「美羽、ちゃん・・。」 名前を呼ばれて、砂場で遊んでいた美羽は、李念の方に目をやる。 「一人で遊んでるの?」 そう言いながら、李念が傍にしゃがみ込んだ。 美羽はまた、遊んでいる砂の方に視線を戻し、ポツリと言う。 「リネンも、一人〜?」 そう聞かれて、李念は一言返した。 「・・うん。」 美羽が一生懸命に作っていた砂の山を、いつの間にか李念も手伝っている。 「美羽〜!」 呼ぶ声が聞こえて、向こうから足早に、母親の景子が現れた。 景子は美羽の所に駆け寄ってきながら、李念の存在に気付き、一瞬ハッとしていたが、軽く頭だけ下げる。 「美羽! ほら、もう帰るわよ!」 そう言って、美羽の手を掴んで、帰宅を促した。 美羽も言われるがままに、すぐに立ち上がり景子と一緒に歩いていく。 砂場に、しゃがみ込んだままの李念が、その去っていく後ろ姿を見つめていたが、美羽は一度だけ振り返って、帰っていった。 夜。 また、隣の家から、大きな怒鳴り声が響いている。 「何で、酒を買わねえんだ〜!」 ガッシャ〜ン‼︎ ガラスのような物が、激しく割れる音が聞こえた。 李念は目を開けたまま身動きせず、隣の状況を耳だけで感じている。 子供の泣き声が聞こえた。 「そんなに、お酒を買えるお金があるわけないでしょ⁈」 女性の声がする。 「口ごたえするか〜!」 男性の激しい大声の後、また何か物が壊れる音がした。 女性の泣く声。 いつもの不快な夜は、いつしか明けていった。 数日後。 早上がりの勤務で、仕事を終えた李念は、近所のスーパーへと買い物に行っていた。 目的は、売れ残った弁当と惣菜。 日中は、500円程で売られている弁当も、夕方の16時を過ぎると、売れ残りと判断されて、店員が割引シールを貼っていく。 その弁当の種類によっては、350円とか300円の値で販売されているのだ。 店側としては、弁当や惣菜を売れ残るぐらいなら、値下げして売り捌いた方が、廃棄処分しなくて済むからだった。 その恩知に預かり、金銭のない李念は、買い付けに行く。 どうやら、今日は運が良いらしい。 トンカツ弁当を値下げで買う事が出来た。 何気なく、幸せな気持ちで家路へと向かう李念。
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