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一人、思い悩んでいる松田の様子を見て、江戸川が心配そうに投げかける。
「松田さん・・。」
その時、江戸川の肩を、横にいた岩倉がポンと叩いて、諭すように言った。
「まあ、松田にとっては、家族が被害に遭った事件だ。その思いは本人にとって、特別なものだろう。お前も、サポートしてやれ。」
「あ、はい!」
江戸川は、快く返答する。
たくさんの車が往来している国道で、一台のパトカーがゆっくりと巡回していた。
すると突然、そのパトカーは赤色回転灯を点灯させ、けたたましくサイレンを鳴らしながら追い越し車線へ移動すると、勢いよく走り出していく。
列をなしてゆっくりと走っている一般の車両たちは、そのパトカーの進路を妨害しないように左車線へと移り、道を譲った。
その一般車両の中に、ライトブルーメタリックの色をした、クロスカントリーモデルの軽自動車RVが並んでいる。
まだ明るい日差しに照らされたボディカラーは、視認的に涼しい印象を与え、シャープなラインを連想させていたが、決して目立つわけでもなく、連なる一般車に溶け込んでいた。
この車のハンドルを握っていたのは、黒髪を後ろで結び、ノースリーブを着たジョオである。
相変わらずその容姿は、美しくも気の強さが表層に表れていた。
「パトカーが、走っていったネ。」
ポツリと呟く。
「それは良いけど・・。ジョオ。あなた、この車どこで買ってきたのヨ〜。」
助手席にいたメグが、訝《いぶか》しい顔で見ながら聞いた。
「この車、チイサイ〜。」
後部座席にいたエイミーが、割って入るように言う。
「ちょっと・・エイミー。足。どけてヨ〜。もう!」
同じく後部座席にいたベスが、すぐさまエイミーに向かって、苦情を訴えた。
「二人とも、ケンカしないの〜!」
メグが後ろを振り返り、ベスとエイミーに注意する。
「これは、軽自動車だから、前乗ってたアルファードに比べて、狭いのは当たり前ヨ!」
ルームミラー越しに、ジョオが後部座席の二人に伝えた。
「ジョオが、この車に乗ってきて、山の中でこの車に乗り換えて一時間ぐらい経ったケド・・。ナンか、足腰が疲れてきたわネ・・。」
今度は、メグがジョオに向かって言う。
「メグ〜。文句を言わないでヨ〜。あなたが、目立たない車を購入してきて、って頼んだんだから〜。この車なら派手じゃないし、あんまり目立たないでしょ?」
ジョオが言い返した。
「確かに目立たないのは分かるけどォ。この車、買ってきたの?」
運転席の方を見返しながら、メグが尋ねる。
「う〜ん、・・まあ。・・買ってはないケド〜・・ネェ。」
「え⁈ 買わないで、どうしたのよ、この車?」
メグが驚きの声をあげた。
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