ケース8️⃣ 前世輪廻

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「とりあえず、これから、どうするゥ?」 ジョオが、メグに問いかけた。 「そうねェ・・・。じゃあ、とりあえず何か食べようか?」 メグは、前髪を少しかきあげながら答える。 「メグって、意外と余裕だね〜。こんなに警察がウロウロしてるのに。」 ジョオが、呆れた顔で返した。 そんな事もお構い無しに、メグは後部座席の二人へと投げかける。 「ねぇ〜。アナタたちも、お腹空いてきたでしょ? 何、食べたい?」 ほんの少し間を置いて、エイミーが声をあげた。 「スシ〜! どんどん流れてくるスシ!」 ベスが、それを黙って見ている。 「回転寿司の事ね。みんな、それでイイかしら?」 メグが、車内を見渡しながら、姉妹たちに投げかけた。 黙って目で頷くベス。 「どうぞ。ご自由に。」 ジョオは、一つ溜息をついて呟いた。 「スッシ〜、スッシ〜、スッシ〜。」 何度も、しつこく言っているエイミー。 「分かったからエイミー。しつこく言わないの。」 メグが諫めた。 その言葉を聞いて、車内で歓喜をあげるエイミー。 「ヤッター! 嬉しい! それと、メグ〜。また人形も買って〜。前の車の中に、忘れてきちゃった〜。」 「また人形、置き忘れてきたの⁈ エイミー、何度目なのォ?」 メグが呆れた様子で言った。 「だって〜、ジョオが〜早く車を移れって、急がせるんだもの〜。」 口を尖らせて、必死に訴えるエイミー。 その事で、怒りを露わにしたジョオの声が、車内に轟いた。 「あのさ〜、私のせいにするつもりなのォ⁈」 四姉妹の乗った車は、そのまま走り続けていく。 春の匂いがする、澄み切った青空の下。 心地良い柔らかな風が、時折通り抜けていく。 所々に見える緑の木々と家並みが広がっており、その周りには山がそびえ、遥かずっと先に微かな海が確認できた。 この屋上から眺める景色は、いつ見てもその穏やかな時間の流れを描いている。 そんな風景と、そよ風に陶酔した貴志は、いつまでも見つめているのだった。 「もう、ほとんど桜は残ってないな。」 突然、背後から声をかけられて、その主の方を振り返ってみる。 スラリと背の高い昌也が、笑顔でそこに立っていた。 貴志が言葉を発する前に、昌也は歩みだして横へと並び、同じ景色を見渡す。 「俺たち、もう高校3年生になったんだなぁ。」 「あ、ああ。そうだな。」 気の利いたセリフもなく返す貴志。 一際《ひときわ》背の高い二人が、屋上の囲い塀に立ち、遠くを見ている。 その時、フッといきなり昌也が、貴志の方へと向き直って、軽いパンチを仕掛けてきた。 思わず防衛体制をとって貴志は、なんとかもがきながら攻撃を払いのける。 「くっ! 何するんだよ!」 その様子を窺いながら、昌也はまるで遊んでいるかのようにニヤニヤと笑った。
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