雨が笑えば

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 世界の美しさはじゅうぶん知った気でいた。美しすぎる世界。  あの日、夏休みが始まろうとしていた日。 なんとも言えない高揚感に包まれた教室。  嬉々とした目で窓を眺めるあの子や、机に向かって眠っているあいつ、黒板に背を向けてはしゃいだりしてるこいつら。 20数名の人間が皆ばらばらの行動を取っている。しかし妙な一体感があった。 誰が欠けてもこの一体感は作れないのだろうな。 そう思った途端に苛立ったのを覚えている。 皆んなと違うことがしたい。 私はなぜか居ても立っても居れず教室を出た。 とにかく誰も視界に入ってほしくなかった。 「波木‼︎」 「波木さん⁉︎」 先生や誰か分からない女の声がした。 構わず私は教室を飛び出した。
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