雨が笑えば

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 屋上なら1人になれる。 私はあそこが好きだった。 駆けるようにして屋上まで上がった。 少し古びたドアを開けた、途端にオレンジが目に入った。 眩しく輝くオレンジを私は薄目にして眺めてみせた。 なんて美しい光だろう。 私はいっそ、あれになりたかった。 腕で枕をつくり寝そべってみた。 オレンジに輝くそれになれたら私は唯一無二。 だが、オレンジになれる訳もなかった。 私は春子。 ただの女子高生だった。 皆んなと違うものを探してみたが、 未だ見つかっていない。 腕でつくった枕が痺れて痛くなってきた、と同時に深いため息をついた。 地面に手をつき起き上がったときに屋上から見える木から鳥が2羽、飛んでいった。 その直後、私のおでこにポツンと落ちてきた。 「雨?」 と言葉を吐いた瞬間たちまち雨が降ってきた。
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