3人が本棚に入れています
本棚に追加
私はクラスの事を思い出した。
色んな人が集まってそれをクラスにしている、それだけの事だと。
そのなかにも個性がある事を。
皆んな私と同じような事を思いながら
生きているんだと。
「私もなれるかな」
そう呟くと、雨は笑った。
屋上から見えた木も踊っている。
なんだか重く見えていた空気と、霞んでいた視界が少し晴れていった。
私はそれまで雨は、空が泣いているものだと思っていた。
でもこの雨は私に、波木春子に笑ってくれている。
優しく包んでくれているような、厳しく教えてくれているようなそんな感覚がした。
不思議な感覚だった。
その感覚を大切にしていたら、
雨はたちまちあがった。
ただの通り雨か夕立か、とても短い雨。
でもこんなに優しい雨はなかった、雨が私に微笑んでるようだった。
空を見ると七色が飛び込んできた。
とても綺麗なアーチだったのを覚えている。
7色全てが違う輝きをしていた。
「波木、なにしてるんだ!」
「先生、ごめんなさい」
言葉とは裏腹に私は笑って言った。
波木春子の夏が始まろうとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!