雨が笑えば

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 私はクラスの事を思い出した。 色んな人が集まってそれをクラスにしている、それだけの事だと。 そのなかにも個性がある事を。 皆んな私と同じような事を思いながら 生きているんだと。 「私もなれるかな」 そう呟くと、雨は笑った。 屋上から見えた木も踊っている。 なんだか重く見えていた空気と、霞んでいた視界が少し晴れていった。 私はそれまで雨は、空が泣いているものだと思っていた。 でもこの雨は私に、波木春子に笑ってくれている。 優しく包んでくれているような、厳しく教えてくれているようなそんな感覚がした。 不思議な感覚だった。 その感覚を大切にしていたら、 雨はたちまちあがった。 ただの通り雨か夕立か、とても短い雨。 でもこんなに優しい雨はなかった、雨が私に微笑んでるようだった。 空を見ると七色が飛び込んできた。 とても綺麗なアーチだったのを覚えている。 7色全てが違う輝きをしていた。 「波木、なにしてるんだ!」 「先生、ごめんなさい」 言葉とは裏腹に私は笑って言った。 波木春子の夏が始まろうとしていた。
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