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双翼の番 一瞬の閃光 第三章 捕らわれた者
猿の死骸が至るところに散らばり、焦げたような生臭い匂いが辺りに充満していた。
DNA解析をする為に、死体を袋に積めていく。
見開いたように目を開け、猿は何を最期に思ったのだろうか?
段々、感情が無くなり、ゴミの様に思えてくるのは不思議だ。
私は思考を停止しているのかも知れない。
短い銃声がした。
ラムダのだろう。
まだ猿が残っていたのか?
私はあまり気にせず、作業をしていた。
ラムダが「ミューが、ミューが拐われた」と叫んでいる声が聞こえた。
パラが雷撃を打って欲しいと頼んで来たので、蟻塚の奥の方まで届くように打ち込んだが、肉の焼ける匂いはしなかった。
私はミューがいる事を知っていて、雷撃を放ったのだ。
パラが魂の抜けたような顔をして、操縦席に座っていた。
私はずっとだまって、外の景色をぼんやりと見ながら、夕飯のメニューについて考えていた。
夕飯では、ミューが拐われた話で持ちきりだった。
ラムダが机を投げ、何枚かスープが入ったままの皿が割れた。
それを片付けた時に手を切った。
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