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双翼の番 一瞬の閃光 第一章 最初から不平等だった
候補生がペアで分けられた時に最初から不平等があった。例外はあるが、強いものは強いもので組み、弱いものは残ったもので組むことになったからだ。
僕はぼんやりと組み分けが進んで行く中、オルトに救われた。
「あなた、あたしと組まない?」
とオルトは言ってくれた。
「あたしはこんなんだから、誰も組んでくれなくて」
筋肉質で大きな身体を縮めるようにして言った。
「なんで女性になりたいのですか?あなたなら素敵な男性になれそうなのに」
「まあね。よく言われる。だけど、あたしは子供を産みたいのよ。あたしと番になってくれる?」
「僕で良ければ、いいですよ。喜んで」
僕らに適合した機体、雷電はかなり操作するのが難しい機体だった。
オルトが楷で電流を流し、敵を気絶させるのが雷電の捕獲方法だ。打撃と電流しかないシンプルな機体ながら、それゆえ高度な技が必要だった。
雷電は大胆で繊細なオルトに似ていると思った。
僕はただオルトが楷を振るいやすいように機体の平行を整えるだけだ。
少しぐらい斜めにしても、オルトの体幹の強さなら問題が無かったが、それはしたくは無かった。
僕の意地でもあった。
射出口を見る、ハッチにイプシロン達が開けた穴の溶接痕がまだ残る。
彼らは今どこで、何をしているのだろう?
カラカラカラと鉄のポールが鳴る音がして、機体が押し上げられる。
ハッチが開き、外に押し出される。
「パラ、大好きよ。本当に愛してる。今日も一日頑張りましょう」とオルトの声が聞こえた。
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