HOME SWEET HOME

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 ウルルは2019年から登山が禁止されているが、その周りに歩道が整備されている。私たちは写真を撮りながらそこを散策した。 岩が波の形のようにえぐれていたり、アボリジニの壁画があったり、とても興味深い場所だ。 「高根沢君、写真撮れた?」 「はあ。これだけ撮ればさすがに充分だと思うんすけど。塩谷さんは?」 「気がついたことは音声メモで録音してる」 「わあ、文字起こし大変だあ」 大変だけど仕方ない、それが私の仕事だ。 「じゃあ戻りましょうか」 「へーい」 高根沢君に声をかけ、再びバスに乗り込んだ。高根沢君とは今回初めて組んだ。ちょっと、いやかなり頼りない感じだが、社の人間からカメラの腕はなかなかだと聞いていた。写真も情報も何が参考になるのかわからないから膨大な数になってしまった。もう充分すぎるほどだろう。これで大丈夫だ、早く日本に帰りたい。  エアーズロックリゾートに戻り、スマホが使えることを確認して、日本にいる千秋(ちあき)に『仕事終わったよ そろそろ帰るね』とメールを送った。  ホテルのレストランで高根沢君と夕食をとった。大きな窓から見る夕暮れの景色が美しい。一緒に見ているのが、目の前でガツガツとステーキを喰らう高根沢君なのが至極残念だ。私は千秋からメールの返信が来ていないことに気づいて、会社や喜連川先生からのメールに千秋の返信が紛れていないか丁寧に見返しながら、高根沢君に尋ねた。 「ねえ、ここと日本の時差ってどれくらい?」 「はい? ああ、30分くらいっす」 「だよね、おかしいなあ」 「どうかしました?」 「うん、ちょっと……返信がきてなくて、千秋(ちあき)から」 思わず名前を口にしてしまうと、いつもぼおっとしている高根沢君が敏感に反応した。 「チアキ? 塩谷さんのお子さんっすか」 私はスマホの画面から顔を上げて、高根沢君をにらんだ。 「いやいや、まだ結婚もしてないから」 「いやいや、今の世の中、順序はいろいろっすから」 高根沢君は涼しい顔でビールを口にした。私はまだ寝る時間じゃないのにと思いながら、もう一度千秋にメールをしたが、返事は返ってこなかった。
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