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1.出会い
ニ年前の夏に僕らは出会った。
それまでブラックな会社で働いていた僕は転職し、書店の社員として採用され働き始めた。
単純に本が好きだったから応募したが、運良く採用された。
全く経験のない僕に仕事を教えてくれた先輩。
それが菊池夏帆さんだった。
僕の二歳上だという彼女は、真っ直ぐな黒髪を一つに束ね、細い黒縁メガネをかけていたためとても真面目そうな人という印象だった。
「武田康成です。よろしくお願いします。」
「あら? こうせいって読むのね。漢字だけ見てやすなりって勘違いしちゃった。」
彼女はそう言って、鈴の音のような可愛らしい声で笑った。
よく言われる。あの有名な作家と同じ漢字だから。
そんな彼女の言葉と笑い声に真面目そうという印象は一瞬で吹き飛び、可愛らしい人だなと思った。
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