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晩餐会は続くが、サイバー貴族が神経質そうなそぶりでかかとを鳴らし続けている。
「犬と猫と人間とでは食べるものがちがう!」
サイバー貴族の発言はあっという間に炎上した。
と言うかサイバー住人は実際はなにも食べてはいないのだが。
ユーゴーは貴族に反論した。
「犬猫と我らのちがいなど本当はわずかなものだ。むろん食べるものもほとんど一緒。実質的には犬猫は我らの友人なのだ。彼らと我らの間に上下などなし!」
貴族はぷんすか怒った。そしてそのまま感情吸い上げ機に存在ごと吸引されてしまう。
「彼の気配がしない。嵐の前の静けさか?」
マイマイマキコが献上しにやって来た。
かならず儀礼的な手続きを踏まえ、恭しく扉をアケルのが彼女のルーティンになっていて、その度にユーゴーは緊張せざるを得なかった。
「ら、ララライ。マママイ。ウー。ウー」
マイマイマキコが来るたびにこの無意味な呪文を唱えねばならぬ。それは新しい風習である。
マイマイマキコはそろりそろりと摺り足で入室する。
「ユーゴー。ユーゴー」
「うむ。我々はまた新たな使命を得たのだな。彼の動きが気がかりだがそれでも行かねばならない」
ユーゴーは久しぶりに実体のある世界に戻った。
彼は失った人間の身体の代わりにハエに乗り移り偵察行動に出た。
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