三千年の眠りから醒めたもの

3/9
前へ
/13ページ
次へ
晩餐会は続くが、サイバー貴族が神経質そうなそぶりでかかとを鳴らし続けている。 「犬と猫と人間とでは食べるものがちがう!」 サイバー貴族の発言はあっという間に炎上した。 と言うかサイバー住人は実際はなにも食べてはいないのだが。 ユーゴーは貴族に反論した。 「犬猫と我らのちがいなど本当はわずかなものだ。むろん食べるものもほとんど一緒。実質的には犬猫は我らの友人なのだ。彼らと我らの間に上下などなし!」 貴族はぷんすか怒った。そしてそのまま感情吸い上げ機に存在ごと吸引されてしまう。 「彼の気配がしない。嵐の前の静けさか?」 マイマイマキコが献上しにやって来た。 かならず儀礼的な手続きを踏まえ、恭しく扉をアケルのが彼女のルーティンになっていて、その度にユーゴーは緊張せざるを得なかった。 「ら、ララライ。マママイ。ウー。ウー」 マイマイマキコが来るたびにこの無意味な呪文を唱えねばならぬ。それは新しい風習である。 マイマイマキコはそろりそろりと摺り足で入室する。 「ユーゴー。ユーゴー」 「うむ。我々はまた新たな使命を得たのだな。彼の動きが気がかりだがそれでも行かねばならない」 ユーゴーは久しぶりに実体のある世界に戻った。 彼は失った人間の身体の代わりにハエに乗り移り偵察行動に出た。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加