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第三章
音もなく銀色のエレベーターの扉が開いた。黒い壁には蜀江文様の透かし照明が等間隔に取り付けられ、淡い光を放っている。床にはワインレッドの絨毯が敷き詰められ、踏み出すたびに足裏を押し返した。
街の中心部、高層建築群を唯一見下ろせる、高層ビルの最上階である。
ハギヤとシスイの前を憂炎が歩いていく。後ろからは五人の男たちと梓豪が付いてきている。誰もが無言であり、狭い廊下には重い緊張感が満ちていた。
突き当たりの部屋にたどり着く。扉はなく、廊下との境に紫檀の四連衝立が置かれている。スーツ姿の若い男が衝立の後ろから現れ、恭しく一行を迎えた。
憂炎が無感情に問う。
「華哥は?」
「こちらでお待ちです」
憂炎は微笑とともに振り返った。彼の顔は下から照明を浴び、白く光っていた。
「行きましょうか」
彼に連れられて入ると、中はちょっとした会合が開けるであろう広い部屋だった。
壁の一面が窓になっており、夜景の明かりが漏れている。黒いジャケットを着た男が、一人がけのソファに身を沈め、腹の位置で両手の指を組んでいた。
目の前には硝子の長卓があり、酒の瓶と杯が置かれている。彼が座るソファと長椅子、向かい合う形で置かれた長椅子の他に、今や見かけることもないステレオが豪奢な設備とともに設置してあった。
それ以外は壁の飾りや収納家具などもない、殺風景な部屋である。まるで晩酌をしながら音楽を流し、街の様子を見下ろすためだけにある部屋のようだ。
憂炎は徳華の前に二人を連れてくると、すぐに壁際に下がった。梓豪を含め他の者たちも、両手を後ろに回して壁際に直立する。
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