第三章

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 階下で取り上げられた武器を返してもらった後、憂炎とともにグランドフロアで待っていると、本当に梓豪が現れた。凶悪な表情を浮かべながら、のしのしと歩いてくる。  憂炎がハギヤとシスイを見てにっこりと笑った。 「それでは、小豪をよろしくお願いしますね」  すかさず少年のがなり声が飛んでくる。 「小豪って呼ぶなよ、炎哥」 「よろしくな小豪」  これはシスイだった。間違いなく名前を侮辱された件を根に持っている。  梓豪は三人の前まで来ると、無表情にシスイを見下ろした。 「もう一度呼んだら殺すぞ」  睨み合う龍と虎。ハギヤは空を仰ぐ。  無慈悲にも憂炎がさっさと出て行ってしまうと、ハギヤは自分より下の位置にある梓豪の頭に向かって声をかけた。一応友好的態度を見せようと、広東語を用いてみる。 「今日はどうする。もう夜も遅いけど」 「普通話でいい。お前の広東語は聞き苦しくてたまらん。豚が死ぬときの声みたいだ」  差し出した手は振り払われるどころか、めった刺しにされて返ってきた。  ハギヤは呆然としたが、シスイはわざと感心した調子で言った。 「耳に豚を飼う奴がいるとは初耳だな」  梓豪は舌打ちをしたが、無視することに決めたらしい。上着の懐から携帯端末を出し、画面を見ながら聞く。 「お前たちの宿はどこだ」 発音にケチをつけられたハギヤが憮然と答える。 「佳賓大旅社(ガーイパンターイレイセー)」  梓豪は携帯端末を素早く操作した後、元の場所にしまった。 「よし、今日は一度帰れ。明日の正午に旅社(ホテル)の正面入口から出てこい」 「帰してくれるんだな」  意外そうにハギヤが普通話で言う。梓豪は彼を睨んだ。 「言っておくが、時間になる前に建物から出るなよ。出ていく姿を見たらすぐ俺に連絡しろと言ってある。そうなったら額に孔開けて特製タペストリーにしてやるからな」 「それは……ご趣味のよろしいことで」  ハギヤが呟くと、シスイが鼻を鳴らした。 「全くだ。生皮の敷物でも敷いてるんじゃないか」  梓豪が苦虫を嚙み潰したような顔で吐き捨てた。 「聞こえるように言ってんじゃねえよ」
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