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「大丈夫?」
再びハギヤに聞かれ、少年は我に返った。目の前には、血の通った、青年の怪訝そうな顔があった。
「梓豪、立てる? すぐこの場から逃げたほうがいい」
梓豪は慌てて立ち上がった。
「な、何でだよ」
「あの型の戦闘用アンドロイドは、一体一体は弱いんだけど、破壊された瞬間に自分の位置と周囲の敵の情報を仲間に向けて発信する。このままここにいたら、集まってきたアンドロイドに袋叩きにされるよ」
「戦闘用、アンドロイド……?」
梓豪がオウム返しにした時、また金属のぶつかる音が聞こえた。
二人が顔を向けると、少し離れたところでシスイが足を高く振り上げていた。通路から現れた人影の横っ面を蹴り飛ばしている。よく見ると、相手は先程倒した敵と全く同じ風貌だった。
ハギヤが肩をすくめる。
「ああいう感じ。急かして悪いけど、地理に詳しいきみが頼りだ。奴らから身を隠したい」
増援がないことを確認した後、シスイが駆け寄ってきた。
ハギヤが彼女に謝罪する。
「ごめん、壊しちゃった」
シスイはハギヤの顔をじっと見つめた後、落ち着いた声色で答える。
「足止めの道具が手元にない以上、破壊が最善だった。非戦闘員が一緒だしな」
あまりにストレートな物言いに、梓豪は鼻白んだ。
「非戦闘員って俺のことか」
「他に誰がいる」
即座に応じるシスイに、梓豪は何も言い返せなかった。何もできなかったのは事実だ。戦闘用アンドロイドというもののこともよく知らない。
シスイが苛立った口調で言葉を重ねた。
「言っておくが狙われるのはお前もだ。死にたくないなら離脱に尽力しろ」
ハギヤがとりなすように言葉を引き取る。
「最後に同種個体に遭遇してから二十分経過すれば、警戒モードは解除されるはずだよ」
梓豪はうつむいて押し黙った後、仏頂面で顔を上げた。
「要するに外から目につきにくい場所で隠れてりゃいいんだな」
シスイが意外そうに眉を上げる。梓豪はスーツのズボンのポケットを探りながら言った。
「それなら、ぴったりの場所がある」
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