第七章

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 憂炎が行ってしまうと、シスイがハギヤに向かって端末の画面を見せてきた。薄暗い渡り廊下に、ブルーライトが眩しく光る。  表示されているのはオリヴァーとの通話画面だった。『話し中』と出ている。 「何度かけてもこうだ。電源が切れているわけでも電波が届かないところにいるわけでもない。誰かと今、話している」 「オリヴァーは誰かの指示で動いているのかな」 「わからない。奴の組織の命令かもしれないし、また違う第三者かもしれない」  二人で話していると、梓豪が歩み寄ってきた。 「……他の組織の奴が何かやらかすなんて日常茶飯事だ。何にせよ、オリヴァーが阿爸を追った奴か、その一味ってことは確実じゃねえのか」  シスイがハギヤに端末を返しながら応じた。 「そうだ。ハギヤと自分をおびき出し、そしてお前と引き合わせて、争わせた。それが目的だとすると、理由が不明瞭だ」  今度はハギヤが発言する。 「おれたちか梓豪のどっちかを消したいんじゃないのかな」 「先刻のアンドロイドによる襲撃を加味すると、こいつ狙いのほうがまだ納得できる」  シスイの視線を受け、梓豪はたじろいだ。低い声で言う。 「華哥は囮ってことか?」 「その可能性もある。ただ徳華が姿を消している理由も不可解な以上、彼とて怪しくないとは言えない。徳華がフィオナを……」 「とにかく!」  話の雲行きが怪しくなってきたので、ハギヤは慌てて割って入った。 「おれたちはオリヴァーを探さない? どこまで嘘を吐いているかわからないけど、フィオナを餌にしておれたちを釣った以上、彼女について何か知っているのかもしれないし」  ね、と梓豪の顔を見る。  梓豪は渋い顔を浮かべつつも、投げやりに言った。 「……まあ、阿爸のことは炎哥が探してくれるしな。俺らは襲撃者のほうを追うのがいいだろう。残りの部下に、オリヴァーの家の近辺と奴の組織との繋がりを探させる」  梓豪は端末を取り出して操作し始めたが、一瞬手を止めてつぶやく。 「……。紅紅はやめとこ」  梓豪が部下に指示を出している間、ハギヤはシスイに向き直り、日本語で囁いた。 「遮ってごめん。おれも徳華の動きはちょっと怪しいと思う。けど、徳華関連のことを梓豪に言わないほうがいい」  シスイは大人しくうなずいた。 「全くもってその通りだ、軽率な発言だった。以降気を付ける」 「怪我は、大丈夫?」 「問題ない。ハギヤこそ、腕の損傷は」  ハギヤは答えなかった。シスイは彼の顔を見上げる。ハギヤは痛みをこらえるような顔で、微笑むばかりだった。 「……ハギヤ?」 「おい」  梓豪に呼ばれ、ハギヤが振り向いたので、結局腕の調子を聞くことはできなかった。 「終わった? じゃあ一旦、雲嵐広場に戻ろうか」 「ああ、尊師にフィオナとアンドロイドについて尋ねておいたから、報告を聞きたい。だがその前に、説明することがあるんじゃねえか」  ハギヤはきょとんとしたが、梓豪は彼を睨みつけた。 「お前の腕の強化外骨格は何だ」
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