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ハギヤとシスイの顔に緊張が走る。梓豪の腕を掴み続けた時に、ハギヤの腕から響いた、機械の軋んだような音を、やはり梓豪も聞いていたのだ。
梓豪は苛立たしげにシスイを見やる。
「お前も、あの足の速さと跳躍力は人間離れしてる。そのブーツの下に強化外骨格を付けているとしか思えない」
梓豪とシスイは二回交戦している。一回目は店の中でシスイは跳躍からの蹴りを放ち、二回目は一度の踏み込みでありえない速度を前進してみせた。同じものを使っている梓豪ならば、それが強化外骨格を使えば実現可能だとすぐに悟ったのだろう。
梓豪は声を荒げた。
「他人に使うなと言っておいて、自分たちは使ってるってのはよ、どういう了見だ!」
声が反響し、寂しげに尾を引いて消えていく。
真摯な響きを伴う哀しい叫び。少年が浮かべている表情も、決して怒りのものだけではなかった。
ハギヤがわずかに唇を噛む。何かを噛みしめるように数度うなずいてから、梓豪と向き合った。コートの袖をまくると、鉄製の腕輪とコードのようなものが両腕に取り付けられている様子が確認できた。梓豪のものとよく似ている。
「そう。おれたちも、機械を自分の四肢に着けている」
梓豪はハギヤの顔を見ている。
「おれたちが装着しているのは、きみのものとはちょっと違うんだ。だけど……」
シスイは自分の片腕を掴み、視線を地面に落としている。
話すことで、思い出したくもない昔の記憶が引きずり出されていく。今の自分すらも、あのときの感情に押し戻されていく。
けれど、こればかりは伝えなければならない。その時が来たのだ。
ハギヤは息を深く吸い、言葉とともに吐き出した。
「……おれも昔はきみのと同じような型の、強化外骨格を使ってたんだ」
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