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【ぐちゃぐちゃのオムライス】
「御主人、何をしていらっしゃるですか?」
御主人はキッチンで一人立ち、オムライスにケチャップを向けていた。
「ぬおぉ⁈気配を消して近づくな馬鹿者‼︎」
「申し訳ございません。」
「なぁに、我がいつも忙しい貴様に褒美をやろうと思ってな。」
「…褒美、ですか。」
御主人が?あの?運動も家事も恋愛経験無し、童貞ポンコツ厨二病御主人が⁇
「…おい、何か失礼な事を考えているだろう。まぁ見ておれ!」
そう仰ると、御主人はぬおぉ…だか、きえぇ…とか言いながらオムライスに絵を描いた…が。
「これはー…潰れた銀杏ですか?」
「何ぃ⁈馬鹿な話をするなぁ‼︎これはお前だぞ。」
「………え、…これが?…私?」
「どうだ上手いだろう。もっと褒めてくれても良いぞ?」
潰れた銀杏では無い⁈そんな筈は…いえ、御主人はドがつくほどのポンコツ!そうですこれが普通ですね。
「流石は御主人。いつも通りで安心しました。」
「そうであろう、そうであろう‼︎我はいつも完璧だからな!」
「はい、いつも完璧(に間違ってる)御主人に仕えて私は幸せです。」
「では早速食せ!遠慮はするなよ!」
「はい、頂きます。」
私は手を合わせ、スプーンを持つ。そして…ケチャップの部分を___
グチャアアア‼︎
潰した。
「⁈」
オムライスをかき混ぜ、一気に食べる。にんじんは生焼けだしオムレツは焦げているが、御主人が頑張ってくれたので残さず頂く。
「あぁぁぁ…我の傑作がぁ…何て事を__」
「なんれふか?ごひゅじん。」
「…はぁ。何でも無い。」
最後に口元を拭うと御主人の方を向いた。何だか不思議な顔をしているが、何かあったのだろうか?
「美味しかったです。有難う御座います。」
「…うむ、まぁ、喜んだのなら何よりだ。」
「これで午後からの仕事も頑張れそうです。」
「うむ!………良かった。(メッチャ小さい呟き)」
御主人はゆるゆる笑った。御主人の奇行はいつもの事だが、今回のは流石に予想外だった。
…あぁでも、私なぞに、気にする価値があるのか?手を煩わせる必要があるのか?…私は貴方の従者なのだから、好きに使えばいいのに。
(…勿体ない。)
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