アナザーストーリー

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悪夢 「鬼塚」 白雪の様な肌、潤んだ濡鴉の瞳。牡丹の頬を桃色に染めて柔らかく微笑んだ。 ちかちか光る視界の中でシーツをウェディングにして、今夜だけは二人きり。 お互いの中身をブチまけて、どろどろに溶け合って、一つになる。 (そうすることで俺達は永遠になれるから。) 月明かりに照らされて、可憐なその人は俺の名前を呼ばなかった。 (そうだ、呼ばれていないから) 愛しい君が甘ったるい声で愛を謳う。 「僕しか見ないで」 絹を触るように両手でゆっくり包み込んだ。黒い黒い奥の無い目が、俺の中に入り込む。 雫が落ちた。 「愛してる」 その言葉を皮切れに、バチンと何が弾けた。 「違う!」 ベッドからガバッと起き上がる。夏だと言うのに、冷や汗でシーツが濡れていた。何度も深呼吸を繰り返し、頭をガシガシ掻いた。 「違う…違うんだ。」 顔を両の手で覆う。 「黒野は……そんなんじゃ…。」 (…夢のお前じゃない。現実のお前に呼ばれたい。) 「……黒野。」 最後に流した涙はお前のだったのか、俺のだったのか。もう分からない。夢を夢で終わらせたくなかった。アイツを酷く汚した気がする。俺の醜い欲望を、夢のアイツに押し付けたんだ。 …自分の男の部分を目の当たりにした気分だ。どんなに取り繕っても、どんなに美しい物で誤魔化そうと、全部全部見破られているんじゃないか?そう感じてしまう。 (__だからって…だからって!) (アイツ一番嫌いなものを押し付けちゃ駄目だろう‼︎) パンツがやたらとねっとりしてる。気持ち悪い、見たくない。 (…アイツには純粋で童心の様な恋心を抱きたかった。) 最悪の目覚めだ。
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