19人が本棚に入れています
本棚に追加
悪夢
「鬼塚」
白雪の様な肌、潤んだ濡鴉の瞳。牡丹の頬を桃色に染めて柔らかく微笑んだ。
ちかちか光る視界の中でシーツをウェディングにして、今夜だけは二人きり。
お互いの中身をブチまけて、どろどろに溶け合って、一つになる。
(そうすることで俺達は永遠になれるから。)
月明かりに照らされて、可憐なその人は俺の名前を呼ばなかった。
(そうだ、呼ばれていないから)
愛しい君が甘ったるい声で愛を謳う。
「僕しか見ないで」
絹を触るように両手でゆっくり包み込んだ。黒い黒い奥の無い目が、俺の中に入り込む。
雫が落ちた。
「愛してる」
その言葉を皮切れに、バチンと何が弾けた。
「違う!」
ベッドからガバッと起き上がる。夏だと言うのに、冷や汗でシーツが濡れていた。何度も深呼吸を繰り返し、頭をガシガシ掻いた。
「違う…違うんだ。」
顔を両の手で覆う。
「黒野は……そんなんじゃ…。」
(…夢のお前じゃない。現実のお前に呼ばれたい。)
「……黒野。」
最後に流した涙はお前のだったのか、俺のだったのか。もう分からない。夢を夢で終わらせたくなかった。アイツを酷く汚した気がする。俺の醜い欲望を、夢のアイツに押し付けたんだ。
…自分の男の部分を目の当たりにした気分だ。どんなに取り繕っても、どんなに美しい物で誤魔化そうと、全部全部見破られているんじゃないか?そう感じてしまう。
(__だからって…だからって!)
(アイツ一番嫌いなものを押し付けちゃ駄目だろう‼︎)
パンツがやたらとねっとりしてる。気持ち悪い、見たくない。
(…アイツには純粋で童心の様な恋心を抱きたかった。)
最悪の目覚めだ。
最初のコメントを投稿しよう!