猫は愛盗り去っていく

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 そんな日々が続くある日のこと。しばらく彼が来ない日が続いた。 「そういえば最近来ないですね、アイツ」  後輩の呟きに、「そうだね」と返す。口には出さないものの、私自身も彼のことは気になっていた。いや、気になっていたというよりはただ会いたかった。 「なんもないといいですけどね~」  後輩の言葉に不安を覚えた。傷だらけの体を思い出して、何事もないように祈った。 「それじゃ、お疲れ様」 「お疲れ様でした」  閉店時間になり、店の片づけを終えて店を出る。家に帰って、夕食を食べて、そこでふと思い出す。カフェに財布を忘れてきてしまったことに。さすがに財布が手元にないのは不安だ。そう思って、重い腰を持ち上げてカフェへと向かった。  暗い夜道を一人で歩くのには、少しだけ勇気が要った。それに加えて、夕方まで降っていなかった雨が強く降っている。  カフェの前まで来て、私は足を止めた。扉の前の大きな塊。じっと蹲ったまま動かないそれに、既視感を覚えて声をかけた。 「大丈夫?」
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