猫は愛盗り去っていく

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「狭いけどごめんね」  そう声をかけるけど、「うん」とふわふわした返事が返って来るだけで、私の言葉がきちんと届いているかは危うい。私の体力では彼をおぶってあげることはできず、結局肩を貸すだけになってしまった。 「シャワー浴びる?体、温めた方がいいんじゃない?」  そう声をかけると、彼はふるふると首を横に振った。 「ごめん、あんま、動きたくないや」  そして、小さな声で答えられた言葉。 「そっか」  無理強いする理由もない。彼の答えを受け入れて、クローゼットの奥にしまわれた男性用のスウェットを引っ張り出した。 「せめてこれに着替えて。風邪ひいちゃうから」  そう言って彼に手渡すと、彼は少し間を置いて「うん」と返してきた。隣の部屋で彼が着替えるのを待つ。しばらくして「着替えたよ」と声が聞こえたため、彼のいる部屋に戻った。少し袖や裾が余っている。 「ちょっと大きいね」  そう声をかけると、彼は少し口角を上げて曖昧に頷いた。 「髪、乾かそっか。座って」  彼を座らせて、ドライヤーで彼の髪を乾かす。彼はその間もじっとしていて、濡れていた髪はふわふわと触り心地がよくなってきた。
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