1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ねぇ」
髪を乾かし終え、ドライヤーを片づけていると、彼が声をかけてきた。体が温まってきたのか、その声は先ほどより元気そうだ。
「何?」
「お姉さんさ、彼氏いるの?」
思いもよらない質問に少し驚いた。
「え、なんで?」
「この服、男物だなーって思って」
彼の表情を見るに、特にその質問に深い意味はなさそうだ。
「元彼のだよ」
嘘をつく必要もないだろうと思い、正直に答える。
「そうなんだ。どんな人だったの?」
てっきりそれで会話は終わると思っていたのに、彼はまた質問を重ねる。
「……かっこいい人だったよ。いつも冷静で」
だからこそ、私は彼に呆れられてしまった。
「私は重かったみたいだけどね」
言ってから、少し後悔した。彼の「重い」という言葉に、ずっと囚われている自分が嫌だった。
最初のコメントを投稿しよう!