猫は愛盗り去っていく

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「ねぇ」  髪を乾かし終え、ドライヤーを片づけていると、彼が声をかけてきた。体が温まってきたのか、その声は先ほどより元気そうだ。 「何?」 「お姉さんさ、彼氏いるの?」  思いもよらない質問に少し驚いた。 「え、なんで?」 「この服、男物だなーって思って」  彼の表情を見るに、特にその質問に深い意味はなさそうだ。 「元彼のだよ」  嘘をつく必要もないだろうと思い、正直に答える。 「そうなんだ。どんな人だったの?」  てっきりそれで会話は終わると思っていたのに、彼はまた質問を重ねる。 「……かっこいい人だったよ。いつも冷静で」  だからこそ、私は彼に呆れられてしまった。 「私は重かったみたいだけどね」  言ってから、少し後悔した。彼の「重い」という言葉に、ずっと囚われている自分が嫌だった。
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