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「確かに、お姉さんって尽くすタイプだろうなって思う」
彼は余った袖をいじりながらそう言う。なんとなくの好奇心で聞いただけだったんだろう。言わなければよかった。そう思っていたのだけれど。
「でも、僕はお姉さんのそういうところ、すごくいいと思う」
彼はそう言って顔を上げた。合わされた目の穏やかな優しさに、逸らしたくても逸らせない。
「お姉さん、優しいもんね。僕なんかにも優しくしてくれて。そういうところに、僕は救われてるよ」
その一言だけで、私の方が救われる思いだった。ずっと嫌だった自分の性格を、ここまで丁寧に拾い上げて認めてもらえたことなんてなかった。
「私も、君に救われてるよ」
私の言葉に、彼はきょとんとして見せた。
「簡単だけどご飯作るからちょっと待ってて」
そんな彼を置いてキッチンに立った。
出来上がったご飯を彼は嬉しそうに完食してくれて、食器を片づけている間に彼はソファで眠ってしまっていた。
翌朝目を覚ますと、彼はもう部屋にはいなかった。
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