猫は愛盗り去っていく

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 それからまた、彼はカフェに姿を現さなくなった。  しばらく気にしていた様子の後輩も、彼の話題を口にすることはなくなっていた。その中で私だけは、彼のことが頭から離れないままの日々を送っていた。  そんなある日、カフェの端に置かれているテレビから流れるニュースに、ふと目をやった時。 「今日未明、〇×市の自宅で高校2年生の新田拓馬さんが死亡しているのが見つかりました。室内にはいじめや家庭不和による自殺を仄めかすメモが見つかっており、警察は自殺と見て捜査を進めています」  その後映し出された写真は、間違いなく彼だった。  仕事中にも関わらず、頭が真っ白になって動けなくなる。それは店長も後輩も同じようだった。
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