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「……なんか、野良猫みたいな奴でしたね」
閉店後、ぽつりと後輩が呟いた。「うん」と返した声は掠れていて、届かなかったかもしれない。
彼のおかげで、メニューが増えて客足も伸びた。
彼のせいで、私は叶わぬ恋をしてしまった。
いつも彼が座っていた奥のボックス席に座っていると、ことりと目の前に甘い甘いミルクティーが置かれる。その香りで、もう駄目だった。
『猫は飼い主に死に際を見せないって言うでしょ』
そんな声と共に彼の無邪気な笑顔が浮かんで、ミルクティーに一つ、波紋を作った。
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