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店のお客さんはいなくなり、彼だけになった頃。彼はミルクティーとシフォンケーキを食べ終え、立ち上がった。
「お会計お願いします」
「あ、いいよ。払わなくて」
そう返すと、彼はまた困った顔をする。
「いやいや、前回もそうだったじゃないですか、さすがに今回は払います」
そのやり取りを見て、店長がやって来る。
「言ったでしょ、そのミルクティー値段決めてないんだよ。実質タダ」
「えっ、どういう理論ですか……。じゃあメニューにあるミルクティーの値段で払います」
「いや、君に出したミルクティーは僕の秘伝のミルクティーだからメニューにあるのとは違うんだよ……」
「もっと高いじゃないですか……!」
まるで漫才のようなやり取りが繰り広げられる。
「じゃあ、せめてシフォンケーキの分は払わせてください」
「あ、それ試作品だからお金いらなーい」
彼の言葉を聞いた後輩が奥からやって来る。意地でも払わせる気のない二人の言葉に、少し笑ってしまう。
「えぇ……。じゃあどうすれば……」
困りきった彼の様子を見ていると、後輩が「そうだ!」と声を上げた。
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