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〈雲読み〉が、祭りの開始を宣言した。
ぼくはうれしくて飛び上がりそうになった。春生まれの長老たちに、祭りがどんなに素晴らしいかをこれまでたっぷりと聞かされてきた。ついにそれを体験できるんだ。
農場にいるすべての帆人が、いっせいに〈島〉の底にあるハッチへ向かって移動し始める。羽虫の栽培ケージのあいだの通路はたちまち人の波で埋まり、ぼくは圧倒されて立ちすくんでしまった。ケージにぴったり体を沿わせ、目の前をぞろぞろと行く列のどこに入ろうかと測っていると、誰かが耳元でささやいた。
「止まっていたら危ないよ」
ひときわ透明な体が美しい、すらりとした帆人だった。彼はぼくを安心させるように微笑みかけた。
「ぼくはレニフ。一緒に行こう」
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