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「……」
隣は静かになったようだ。
しかしだからと言って油断は出来ない。ここで『浅い眠り』を妨げると、一瞬にして全ての努力が徒労に終わるのだ。このまま『深い眠り』まで持ち込まなければ任務は遂行できない。
俗に『疲れさせると寝つきがいい』と言われるが、三輪車を頑張って付き合ったところで10分も仮眠すれば元通り。
『知育玩具で頭を使わせれば』というのも試したが簡単なやつは意味がないし、あまり難しいと食いついてこないからやっぱりダメだった。
昼寝がよく出来ると夜も寝やすいというが、そもそも昼寝嫌いだし。
車に乗せて走ると『うとうとする』場合もあるが、どういう理屈なのか家の駐車場に到着した途端に目が覚める。……信号停止では起きないクセに。どうなってるのか、その理屈は未だに解明されていない。
さて、少し様子を伺うか。
「……」
やはり動きはないが、ここは我慢のしどころだろう。
くっそぉ、覚えてろよ? いつかお前がまかり間違って結婚でもしようもんなら、その相手の女性に「昔の裕太はこういうヤツで」と思いっきり暴露して恥をかかせてやるからな。
いつになるのか、分からないけどさ。
その時だった。
そ……と、寝室のドアが開いた。なかなか戻ってこない僕に気をもんだのだろう。奥様が様子を見にきたのだ。
「……もう寝た?」
小声で僕に尋ねると、隣から返事が返ってきた。
「しー。ぱぱね、いま、ねんねちたところだから」
……やっぱり起きてやがったか、この狸寝入り野郎め。
「そう。じゃぁ、パパをよろしくね」
笑いを噛み殺しながら、奥様がドアを閉めた。
さて……今日はどっちが先に寝付くやら。『おやすみバトル』の夜はまだもう少し続きそうだ。
完
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