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「つっても目撃証言が一つだけ。大会の少し前、夜に一人で集落があるのとは別の方角の山の中から街に入ってきたのを見たっていう話だ。軽装だし一人だし夜だしっていうので印象に残ったみたいだな。実際少なくとも街や集落の出身じゃないみたいだ。魔法具使いなんてレアな存在なのに、あたしの情報網にまったく引っかからないってのは結構妙な話なんだよな。魔法具だって普通は誰かから買うわけだし」
『何者なのかはいまだわからず、ということか』
別に挑発するような意図はないのはわかっていたが、一応言い返した。
「いくら優秀でもまだ来たばっかだからな。でもまあ、あたしがちょっと調べて全然わからないってことは要は怪しいってことだ。・・・それから、ワザンドリーについての現時点での報告もしておく。こいつも最近のことだが、魔術師に命を狙われたらしい」
すると、魔王の声が慎重になった。
『それは・・・確かな情報なのか?』
首を縦に振る。
「襲われたこと自体は事実だ。でも道を歩いているときに遠くから魔術っぽい攻撃が飛んできたっていう話だからなぁ。本当に魔術なのかも、飛ばしたのが魔術師なのかもわからん。ただ、魔法具の威力ではなかったみたいだけど」
『それと、大会を開いたことは・・・』
「まず間違いなく関係してるね。本当に魔術師が引っかかると思っていたかはわからんけど。しかもまったくのヒト違いの」
こっちも魔術師なので、追われている本人ではなくとも警戒せざるを得ない。
魔力探知は厄介だが、穴もある。それを知っていればある程度はこうして魔術を使うこともできる。
魔王が話を繋げた。
『ワザンドリーの評判は?』
今度はやや大げさに首を横に振るジェスチャーをした。
「良くはない。というか、商人ギルドから弾かれてもダメージがほとんどないってのは要するに独自の、ある種闇っぽいルートを持ってるってことらしいから、完全にクリーンな人物なわけがないんだよな」
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