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そう言って一通り部屋の説明をしてくれた。僕の部屋はゲストルームのようでシングルベッドが置いてあり、そことは少し離れて木佐さんのベッドルームがある。
「部屋には鍵がついてないけど、妊娠中は発情期もないし、さっきも言ったけど妊夫さんを襲ったりしないから安心して。でも心配だったら鍵を買ってくるよ」
別にそこは心配してないけど・・・。
「あの、僕まだ一緒に住むって言ってませんよ?」
さっきからどんどん話が進んでいくけど、まだ承知した訳ではない。なのに、木佐さんはにっこり笑ってぽんぽんと僕の肩を叩く。
「ダメ。ここに住むんだよ。社長命令ね」
その言葉、さっきも聞きましたけど・・・。
「いくら社長でも、それは横暴ですよ?」
と一応言ってみるものの、何となく僕の意見は聞いてくれない気がする。
「そこまで木佐さんに甘える訳にはいきません」
木佐さんは利用してこき使えって言ってくれるけど、そこまでやってもらうのは申しわけない。こうやって朝迎えに来てもらうだけでもありがたいのに、いっしょに住むだなんて。なのに木佐さんはなんでもない事のように言う。
「僕は甘えて欲しいんだよ。それにね、昨日の今日でそんな顔色されたら僕の方が心配でたまらなくなる。君を家に送ったあと、ちゃんと無事でいるか、苦しんでないか、倒れてないか、気になって仕方がない。昨日だってちゃんと食べたの?」
僕はそれには答えられずに下を向く。
「こんなに心配して朝顔を見たら酷い顔色して・・・。僕のためにも、お願いだから僕の目の届くところにいて欲しい。だからって見返りなんか求めないから。あくまでも僕のためにそうして欲しい。それでもし僕のことを好きになり始めてくれたら、その時また改めて番とか結婚とかを申し込むよ。だから今は・・・」
僕は黙って木佐さんの言葉を聞いていたけど、思わず途中で口を挟んでしまった。だって・・・。
「番?」
今番って言った?
「そうだよ。僕は出来れば君と番って結婚して、正式にこの子の父親になりたいと思ってるんだ」
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