さかなのみるゆめ

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智明とは幼稚園からの同級生だった。いわゆる幼なじみと言うやつだ。だけど、初めから親しかったわけじゃない。 中学に上がってクラスが同じになったとき、共通の友達を介して話すようになった。お互い顔は知っていたけど特に友達だった訳ではなく、なんとなくの腐れ縁。それが話すようになって、遊ぶようになって、そしてそれが常になった。それはクラスが別れても変わらず、仲良し5人グループの1人としていつも行動を共にしていたのだ。 それは、中2で行った第二性の診断の後も変わらなかった。 僕はオメガで、智明はアルファ。 ほかの三人はみんなベータだったけど、僕も智明も特別扱いされることも無く、変わらずみんな仲良くしてくれた。だからあの時も、5人でクリスマスパーティーをしていたんだ。 あれは中3のクリスマスだった。受験真っ只中で全然遊んでいなかった僕達は、クリスマスくらいはとパーティを開くことにした。と言っても中学生。親が共働きの智明の家で、お菓子とジュースを持ち込んでのささやかなものだった。日頃の鬱憤を晴らすかのように大騒ぎして、気の済むまでゲームして、そして夕方には解散になった。そこまでは本当に普通の中学生の日常だった。だけど・・・。 みんなと一緒に智明の家から帰っている途中、僕は忘れ物に気がついた。 大したものでなかったならそのまま帰って後日返してもらえばよかったんだけど、忘れたものがスマホだったため、僕は智明の家に取りに戻ることにしたんだ。 一言連絡を入れるにもスマホがないので出来ず、きっといきなり戻って来た僕に驚いたと思うけど、智明は嫌な顔ひとつせず迎え入れてくれた。そして僕を玄関に待たせてスマホを取りに行ってくれたものの、使っていた部屋にはなく、手ぶらで戻ってきた。 そこで初めて、最後に入ったトイレに忘れてきたことを思い出した僕は、失礼して上がらせてもらってトイレまで取りにいったんだ。無事にスマホは見つかり、僕はそのまま帰るはずだった。だけどせっかく上がったんだからとお茶を入れてくれた智明に促され、リビングに入った時だった。
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