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「引き取れるわけないだろ。
母親なんだから、おまえが引き取れよ!」
「何よ。あんただって父親でしょ?
あの女に子供が出来たって、萌香があんたの娘って変えられないんだから。
あたしに慰謝料請求されたくなかったら、大人しく引き取ってよね」
自分のことを両親は要らない子供だと言っている……萌香は、泣きそうになったけど、必死にこらえた。
父親の舌打ちの音が聞こえた。
「よく言うな。俺も、あいつに慰謝料請求してもいいんだぞ。母親のくせに、子供を放って元カレと不倫してるって会社に知られたくないよな」
しばらく音が消えた。
不安になるほどの長い静寂に、萌香がそっと窺おうとすると、母親の溜息が聞こえた。
「分かったわ。形だけ貴方が引き取ってよ。生活費や大学までの学費、半分出すわ。それでいいでしょ。
名字が変わったら、さすがに可哀想だから」
「ああ、それでいい。この家は俺がそのまま住むから、萌香に家政婦つけて違う部屋に引っ越しさせていいか」
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