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この家から離れた場所に住むことになったと分かった。
少し前の夜に言っていたとおり、父親はそのまま住んで、もうじき知らない人が来る。
数日前には、母親は荷物と一緒にいなくなった。別れを言ってくれることもなく。
母親にとって、萌香は邪魔な人間だったと知るのは悲しかった。そして父親も、萌香のことをどうでもいいと思っている……
「小学校の卒業式だが、二人とも忙しくて行けそうにない。
もう大きくなったから、誰もいなくても大丈夫だろ?」
卒業式に来たくないと分かる言葉に、萌香の瞳は潤んだけど、黙って頷いた。
一緒に暮らすのも嫌なら、卒業式に来てくれるわけもない。
萌香は両親に捨てられた。胸が痛くなるような、その事実は変えられない。
これからは、ずっと一人で暮らすことになると、少女は理解するしかなかった。
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