01 お持ち帰り【雪橋】

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01 お持ち帰り【雪橋】

 会社の先輩である葉山(はやま)理玖斗(りくと)さんと付き合って半年。  キスもしたことがなかったという理玖さんは、俺が愛でている所為か日に日に色気が増していっている。  非常にマズい。  このままでは、今まで理玖さんの可愛さに気付かなかった奴らにバレてしまう。  だがしかし、愛でる事は止められない。  一緒に過ごしても理玖さんを抱かないという日を作ろうとしても、俺の身体は無意識に理玖さんを求めてしまう。  そして、理玖さんの色気がまた増してしまうのだ。  ああ見えて、理玖さんはチョロいから(しかも自覚があるらしい)ちょっと好みの野郎に誘われたら拒めないだろう。  好みじゃなかったとしても、無理矢理でも抑え込まれてナニかされたら抵抗する前に陥落してしまう。  だってあの人、快楽に弱いから。  俺がちょっと触るだけで蕩けちゃうし、顔を真っ赤にして恥ずかしそうに「もっと」って言うし、素直に「気持ちいい」って泣くし。  あ……考えただけで勃ちそう。 「葉山さん、次何飲みますー?」  理玖さんに触りたくてウズウズしている俺の耳に、後輩の棚岡(たなおか)の馴れ馴れしい声が背後のテーブルから届いた。  本日は会社の飲み会である。  懇親会という大義名分のもと、都合の付く社員が一堂に会し飲むだけの会だ。  歓送迎会や忘年会に比べれば出席者は少ないが、会社からほど近い小洒落た店の、結婚式の二次会をするような大きめの個室が用意されていた。  一応、社内の付き合いという事で俺も理玖さんも出席したが、顔を出すのが遅れた為、既にほとんどの席が埋まっていて別々のテーブルに座る事になってしまった。  理玖さんは酒に弱くないし割りと好きな方だが、ほろ酔い状態になると色気が倍増するのであまり飲んで欲しくはない。  理玖さんの魅力に気付いた奴に、俺の隙をついてお持ち帰りされかねない。  一瞬たりとも油断はできない。
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