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「玲人、来てくれたの? ありがとう。ずっと……会いたかった……」
胡桃は笑顔を浮かべる。その瞳には涙が溜まっている。だけど、それは決して悲しさを纏った涙ではない。
「ずっと待ってた。ずっと君だけを待ってた」
僕は彼女に近づく。彼女も僕に近づいて来る。彼女はゆっくりと僕の腕の中に納まる。僕はゆっくりと優しく彼女の背中に腕を回す。すべてがスローモーションのようだ。まるで失われてしまった時間が一気に取り戻されるかのように。
「胡桃、君のことが好きだ。ずっと好きだった。今も好きだ。これからもずっと好きだ」
「玲人、私もあなたが好きよ。今も、これからもずっと」
彼女がゆっくりと顔を上げる。僕は彼女の柔らかい唇に、そっと唇を重ねた。僕たちを乗せてきた電車が停車時間を終えて、ゆっくりと直方駅を発車した。
【完】
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