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窓の外に目をやると、新幹線はちょうど新岩国駅を通過しようとしているところだった。小倉に到着するまでにはまだずいぶん時間がある。僕はずいぶんぬるくなってしまったビールを一口飲んでから鞄を探った。暇つぶしにと思って本を何冊か持ってきている。だけど、どうやら本は鞄の底の方に沈んでしまっているらしくなかなか見つからない。
新幹線は新岩国駅を通り過ぎて、またトンネルに入る。僕たちを乗せた新幹線は夜のような暗闇の中を高速で駆け抜けていく。何もすることがないから煙草を吸いに行こうと思った。隣の女性に煙草を勧めたせいで、僕自身が煙草を吸いたくなってしまったのだ。
僕は一度ポケットの中から煙草の箱とライターを取り出し、それがきちんとあることを確認してから立ち上がり、通路に出て喫煙室に向かって一歩踏み出した。
そのとき、僕は背後から呼び止められた。僕を呼び止めたのは隣の席の女性だった。
「あの、すみません。やっぱり、煙草一本貰ってもいいですか?」
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