声が聴きたくて

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 ゲームが好き。    物心ついた頃には、コントローラーを握っていた記憶がある。 「虹子(にこ)も、将来の夢はプロゲーマーか?」  なんて、父は嬉しそうに言っていたけど。  私には、残念ながら天才的なゲームのセンスは備わっていなかった。  人並み以上の自負はなくもないけど?  でも、最近ではプレイするよりもゲーム実況を見る方が好きだったりする。    ハマっているのは、バトルロイヤルシューティングゲーム。    狭まっていくエリアの中で、プレイヤーが最後のひとりになるまで戦うというシンプルなゲームだ。  目的は単純明快なのに、高度な駆け引きや心理戦が展開されるから観ていて飽きることがない。  今の一押しは、レッドジャスパーさん。  知名度はまだ低いけど、ゲームを心から楽しんでいることが伝わってくる少年のような人だ。  あと、声がすごく良い。  そこはポイント高い。    普段は穏やかな話し方なのに、テンションが上がると口調が挑発的になって。    そのギャップが、もう…… 「聞き逃してなるものか!」  薄い壁の向こうから兄の声が聞こえてきて、私はすかさずイヤホンに手を伸ばした。  お兄ちゃんは今日もゲームに熱が入ってるな。 『隠れてもムダだよ?』  再びライブに集中すると、レッドジャスパーさんの低音ボイスが聞こえてきた。  はぁ……たまらない。  ベッドの上で、思わず足をバタつかせてしまうほど。  だって、かっこよすぎるんだもん。   
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