5人が本棚に入れています
本棚に追加
「パ、パッドならできるんですけど、キーボードは、配置が全然わからないですね……」
座ってみたものの、何をどうしていいかわからない。
キーマウとは、キーボードとマウスの略で。
パッドとは、コントローラーのこと。
家庭用のゲーム機に親しんでいる人は、キーマウの操作は慣れるまでは扱いが難しいのだ。
「じゃあ、一緒にやってみようか。マウス持ってみて」
言われるままに右手をマウスへ置くと、レッドさんが手を重ねてきた。
「ひぁっ……!」
大きくて、硬くて、あたたかい右手に嬉しみの悲鳴がもれてしまう。
「左手は、ここ」
五指を操られ、ななすすべもない。
レッドさんの顔が頭上にあって、めちゃくちゃ近くて心臓がはち切れそうだよ……。
「レレレ、レッドさん!」
「ん?」
「む、無理です……」
また鼻血が出てしまわないよう、がんばってこらえているけど。
「もしかして、緊張してる?」
上から顔をのぞき込まれ、限界を突破した私はチェアから崩れ落ちた。
「ニコちゃん大丈夫?」
とっても心配そうな顔をしてるけど。
あなたが心臓に悪いことをするからですよ……。
「今度は何が起きた?」
トイレから戻った兄が、腰を抜かした私を見下ろしてくる。
っていうか、トイレ長くない?
さては……人様の家で大をするなんて、お兄ちゃんなかなかの大物だな。
最初のコメントを投稿しよう!