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突然の雨
それからどのぐらい時間がたったのだろうか。
ぽつぽつと雨が降ってきた。
「うっわ、雨が降ってきた……」
「えー? うち傘持ってきてないんだけど」
南と美優がどんよりとした灰色の雲を見上げた。
「二人とも持ってきてないのかぁ。私も持ってきてないよ……」
天気予報には雨のマークはなかったから傘なんて持ってきてなかった。
そんな間にも雨は徐々に強さを増している。
これが夕立というものなのだろうか?
「あっ、屋外のアトラクション全部中止になっちゃった……」
美優が残念そうにスマホを見つめた。
「えっ……」
「せっかく遊園地来たのに、残念だな。それなら早く雨宿りしよっか……」
私たちはジェットコースターの列から外れて近くの建物に避難した。
「あーあ、せっかく南と美優について行ったのになぁ」
私はぼんやりと一向にやまなそうな雨とにらめっこする。
ふと、違和感に気づいて髪をいじった。
外は滝のように雨が降ってるから、普通なら髪は濡れているはずだ。
でも私の髪は全然濡れていなかった。
気のせいかな、と思って腕も確認する。
これも、雫は一滴もついていなかった、タオルとかでふいたわけでもないのに。
私はなにか疑問に思って南と美優のことを忘れて大雨が降る中、外に出た。
そして、自分は無意識に雨にあたっていた。
普通なら大雨にあたって痛いとか冷たいとかそんな感情がわいてくるだろう。
でも、雨は私の体にあたることなく腕を貫通していて痛さも何も感じかなった。
そんなことに違和感もなぜだかわかなかった。
それどころか自分の本当の姿にようやく気付けた気がした。
私は南と美優との会話を思い出す。
あぁ、そういえば私の発言を抜いても二人の会話は成立してたなぁ。
だから南と美優の会話に違和感があったり、存在感が薄かったりしたんだ。
「そっか……」
私は小さくつぶやいて、微笑む。
もちろん、その声は誰にも届かなかった。
それもそうだ。
なんて言ったって、私は幽霊なのだから――。
-Fin-
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