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番外編 しあわせだよ
薄暗い部屋で、晋哉は組み敷く体を眺めていた。
短い呼吸を繰り返す口は、吐息とともに甘い声をこぼす。
「あっ! しんやさん、ふかい、です……んっ」
「あぁ、その方が良いだろ」
「ん、んぅっ」
ぐちぐち、と小刻みに腰を揺する。その度に喘ぐみつきに、晋哉もひどく欲情した。
いやらしく開いたままの口を、晋哉の唇が覆う。舌を侵入させる晋哉に、みつきも一生懸命に応えた。
たどたどしいながらも応えるみつきに、晋哉の心臓は引っかかれたような痛みに襲われる。
「ん、んっ、っぁ」
絡ませていた舌を引っ込め、顔を離す。そのあいだも繰り返される動きに、みつきは喘ぎ続けた。
「みつき……」
親指で柔らかな唇をそっとなぞる。中を突く激しさとは反対に、優しい指の感触。
みつきは、とろんと蕩けきっている瞳を晋哉に向けた。
「しんやさん、しあわせ、です」
「……そうか」
再び、晋哉の心臓に痛みが走る。以前は他人によって感情を動かされるを嫌っていたが、みつきからもたらされるこの痛みは、案外嫌いではなかった。
呂律のまわらないみつきが、またびくっと体を震わせる。
「あっ、あっ、また、おくっ」
「はぁっ」
「ん、んんっ、あっ」
みつきの体を抱きかかえるようにして、晋哉はまた奥を目指す。
もっとみつきをどろどろに溶かしたいという自分に、晋哉は半ば呆れていた。
しかしその欲求は、日に日に強くなっていく。
「っ、みつき、俺をくれてやる」
「あぁっ、はぁっ、しんや、さんっ」
何度も何度も自分を呼ぶ唇に、晋哉はまた吸い付いた。激しいキスを受けながら、みつきも強請るようにしがみつく。お互いに焼け付くような快感をつのらせていった。
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