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「まあしょうがないね、学祭終わったらまたゆっくり聞くよ。さーて、どの催し物に行こうか。パンフレットパンフレットー」
話を切り替えるように明るく言った彼女は、持っていたパンフレットを開く。全てのクラスの出し物が一覧で見れるものだ。私もなるべく明るい表情にしてそれを覗き込んだ。今は楽しもう、私が暗い顔をするのはおかしい。普通通りにしていなくちゃ。
パンフレットに載っているのは個性に富んだ出し物たち。さて、気分を変えて今は学祭を楽しまなきゃ……
「あのー、七瀬さん?」
突然背後から声をかけられて美里と共に振り返る。一人の男子生徒が立っていた。目に入ったクラスTシャツに、『2年5組 おばけ屋敷』の文字が書かれていた。
顔を見てみると、話したこともない男子生徒だ。色素の薄い髪がサラサラとしており、整った中性的な顔立ちは見覚えがあった。話したことはないが、顔だけは知っている相手だ。
「あ、はい……?」
とりあえず返事をしてみると、相手はにっこりと笑った。
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