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「あのさー俺三嶋圭吾っていうんだけど。後夜祭なんだけどさ、知り合いが校庭でバンド演奏するんだよね。それどうしても見たくて……でもほら、あの変な伝統あるじゃん? 一緒に行ってくれる子探してるんだけど、行ってくれないかなー? 七瀬さん喋ってみたいと思ってたんだよね」
どうも薄っぺらいと感じるセリフが並べられ、つい眉間に皺を寄せた。サラサラと軽く言われた言葉たちに重みはない。そもそも、何でこんな人が私に声をかけてきたんだ? 不信感でいっぱいになる。
それを隠すように愛想笑いを浮かべ三嶋くんに言う。
「あーありがとうございます、でも友達と体育館行く約束してるんで」
「あ、そうなの? んーそっかあ。分かった、じゃあまたね」
やけにあっさり引き下がった彼は、全く名残惜しそうな様子も見せることなく私たちに手を振ってその場から離れた。ずっと黙ってみていた美里が感心したように私にいう。
「最近さあ、陽菜めちゃモテるよね? 今のってイケメンで有名な三嶋くんじゃん!」
「モテる、っていうか……不思議な現象が続いてるだけなんだけど」
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