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ぼんやりとそう思っては、自分の目から涙が滲んでしまった。もう泣き尽くしたと思っていたのに、未だこの失恋に心はついてこれないようだった。
美里に気づかれないよう涙を拭った。何とか気持ちを立て直し、明るい声を出す。
「さ、それでどこにいこっか!」
「ええーとじゃあ、友達のクラス見に行ってみたいんだけどいい?」
「うん行こ行こ!」
学祭の賑やかさに埋もれてしまいたい。私は自分の気持ちを誤魔化すようにして足を踏み出した。
全ての出し物は大変見応えがあった。
年に一度のイベントを目一杯楽しむ。一般参加もあるので、途中家族と会ったりしてまた違った刺激を感じられた。
全てのクラスを見て回るのは無理があるので、見たいものを目星をつけながら美里と学祭を堪能していた。明るい場所にいれば気も紛れて、悲しいことを考えなくて済んだ。お腹が痛くなるほど笑ったり、歓声を上げながら感動する。ここ最近全くできなくなっていたことだった。
いくらか回ったところで、だいぶ時間が経ったことに気づく。楽しい時間とはすぎるのが早いのだ。さて次はどこにしようか、とパンフレットを見たときふと思い出したことがあった。
「ねえそういえば。美里彼氏が見にくるって言ってなかった?」
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