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私は突然そう思い出した。いつだったかそう言っていた気がする。美里はああ、と頷く。
「うん、今日どうしても外せない用があったからそれが終わった午後少しだけ顔出すって言ってた。そろそろ来てるかな」
「え! なんだ、連絡して一緒に回っておいでよ!」
「別にいいよ〜」
「あと少しで片付けに入るよ! せっかくだから」
私が促しても、彼女は迷うようにしていた。
「でも陽菜と……」
「私とはもう回ったじゃん! それにどうせすぐ後夜祭が始まるよ、その時また体育館で会えばいいから。ほら、行ってきて!」
「そ、そう……? じゃあ、ちょっとだけ会ってこようかな」
申し訳なさそうにいう美里の背中を押す。私は美里の彼氏に一度会ったことがある。頭のいい他校の生徒で、優しそうな人だった。せっかく遊びにきてくれるんだし、会わなきゃね。
私に手を振ると美里は足を早めてその場から立ち去った。多分私に気を遣っていただけで、本当は彼氏に会いに行きたかったんだろうな、と予想する。もっと早く気付いてあげればよかった。
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